ビジネスに関する保険とベンチャー企業

昨日SVJENRTに参加した。当日シリコンバレーには大雨が降り、参加者の集まりが悪く少々遅れて始まった。場所はJETROサンノゼ事務所。

テーマは「ビジネスに関する保険」である。今回は損保ジャパンアメリカ保険会社の方が講師として招かれていた。

「保険はリスクマネジメントの5つ手法の一つ」というくだりで始まった。

・リスク回避 リスク要因の完全排除
・リスクの保有 保険料を抑えるためにあえてリスクを保有する戦略
・リスクの移転 第3者へのリスクの移転
ロスコントール 安全管理によるリスクの低減
・保険

企業保険の分野は大きく「賠償保険」「物保険」の二つ分かれる。
賠償保険の基本となるのは「一般賠償」(General Liability)である。その中には通常、製造物責任(Product Liability)と施設賠償(Premises Liability)が含まれる。昨今問題となるのは「賠償保険」の場合が多く、その説明に多くの時間が割かれた。

説明が続く中、焦れた参加者から質問がでた。

「僕の場合〓」「私の場合〓」という具合に生々しい問題ばかりだ。

あまりに具体的なため、講師も回答に困ることが多く、その場合他の参加者がまた実体験によるコメントを出すと言った具合に進んだ。結局、資料の半分にも行かないうちに質疑応答、ディスカッションになってしまった。

特徴的な起業家の発言をいくつかピックアップ。(※正確ではありません、主旨はあってると思います)

「資産や設備がないベンチャーにとって初期のころ最も気をつけなければいけないのが『不当解雇』の問題だ。どんなにきちんと面接して採用しても10人に3人はダメな奴がくる。モラルの低下を防ぐためにも解雇しなくてはいけない。」

「僕も3回訴えられています。1勝2敗です」

「あたしの会社の小さいので保険にはいれないの?どうしたらいいでしょうか?」

「30人くらいのソフトウェアの開発企業で保険はいくらくらいかかりますか?」
「・・・・」

「訴えてくる側は相手のポケット(財務状況)を見て金額を決めてくる。これくらいなら払ってくれるんじゃないの?という感じです。」

「ある人に役員になってもらおうとしたらD&O(役員賠償保険)に入ってないとダメだといわれた」

「保険は所詮は気休め、大切なことは(訴えられたときに)誠意を持って交渉することだ。たとえ自分が100%悪くないと思っていても、50%くらいは悪いと思って交渉する。」

アメリカは個人もそうだが、ビジネス保険を取り扱う会社の数や商品の数も多い。その中で自分のリスクを正確に分析し、適当な価格で商品を選ぶことはとても難しい。起業家にとって大きな障害の一つになっていると感じた。

「良いブローカーを探してください。」講師はそうコメントされた。アメリカでは日本と違って企業や個人が直接保険会社と交渉(保険商品の説明、設計)をすることはなく、ブローカー(代理店)を通して行われる。「良いブローカー」に出会うことが適正な保険を利用するための第一歩となる。

ただし、ブローカーに対しては「ブローカーもやはり保険会社側だ。我々の立場になって一緒に保険会社と交渉してくれることはない。事が起きると結局保険会社と直接交渉することになる。」と手厳しい意見も出た。


その後懇親会に移動。その際何人かの起業家の方とお話をすることができた。一番印象的だったMOTIONLAB Dr.Kanayama氏を簡単に紹介。

「今のロボットはみんな馬鹿なんです」

金山さんは現在お作りになっているMotionMind(ロボットのOS)について目を輝かせて説明してくれた。詳しいことは僕にはぜんぜん分からないのだが、ポイントは「超音波による空間認識」とおっしゃっていた。最初の具体的な成果がもうすぐできるそうだ。とても楽しみである。

RTはソフトウェア開発、人材派遣、英語の教材販売などジャンルは違ってもみんなこのアメリカで自分の力のみで勝負している強者(つわもの)の集まりだと感じた。「RTがSVJENのコアなんです」と世話役のBEANS International Corpの遠藤氏がおっしゃっていたが、それは日本人の起業家を支援するSVJENの活動の根幹に、ネットワークと実体験にも基づいた知恵と経験の共有があるからだろう。

僕は起業家ではないので、今回はオブザーバーで参加させてもらった。短い時間ではあったが、とても有意義であったと思う。